トップガン マーヴェリック』を4DXで彼女と観た。

彼女と相談して前の方の席を予約していたのだけど、彼女は後ろのほうの席をとっていたと思っていたらしく、始まる直前で口論になってしまった。

「ごめんね!」と語気を荒くしていうと会話がとまって、ギクシャクしたまま映画が始まった。4DXは席が動いたりフラッシュがたいたり、煙が吹き出たり、色んなデモンストレーションを楽しげにして、それだけに僕と彼女の雰囲気はかなしいと思った。

でも椅子の動きや煙のあまりのことに驚いていると、彼女は少し気まづそうに笑ったあとで、「さっきはごめんね、言いすぎちゃった」って耳元でささやいて、僕は泣きだしてしまいたい気持ちになった。

いくつもの少しのわすれられない愛おしさのディティールが、ぼくを彼女に縛り付ける。ぼくはこの子をどうしても幸せにしたいと思う。

*

一方で、ぼくは何て退屈なことになってしまったんだって嘆く。彼女と心から通じあえたことはなくて、ぼくの孤独は、ぼく自身からも忘れられていく気がしてる。それはあの時、あんなに大切なものだったのに。