年々映画の感想を書くのが難しくなってきている。言語化できない感想を大事にしたいという気持ちを長く抱えすぎて、言語化する力が失われてきたのかもしれない。

なので、これからはすこし意識的に書いてみようと思う。

(むかしはほっといてもメモに長文を記録していたバイタリティが信じられない。)

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『ケイコ 目を澄ませて』

2022年12月公開。三宅唱監督作。アマプラで観た。

間やショットの切り替えのタイミング、音楽のつかいかたなど含めて映像がとても綺麗な作品。前作の『きみの鳥はうたえる』も、今でもおぼえているくらいモラトリアムの空気感がすばらしい作品だった。今作はもうすこし大人というか、仕事をしながら、ボクシングにうちこむ、生活をかかえる女性が描かれる。

主演は岸井ゆきのなのだけど、今作はかなり雰囲気がちがっていて驚いた。いつものよくもわるくも浅い雰囲気は全くなくて、ちゃんと自己を抱えた女性、という感じ。いつもの浅い感じも演技だったのだな、と彼女自体に抱えてしまっていた苦手意識がとけた。

ボクシングという主題もいい。『オールラウンダー廻』とか昔すきだったのだけど、格闘技はそのもの自体というより、必然的に生活との関係において描かれるものという印象がある。生活と結びついた静かな闘い。全く運動ができない僕も、ボクシングはじめようかな、と少しだけ思った。

途中、サイレント映画のように黒い画面にセリフが表示される演出が入る。ここも、字幕で表示されるよりも手話のジェスチャーに意識がいくので、上手いと思った。

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『タコピーの原罪』

2022年の作品。全2巻。作者はタイザン5。

絵が上手いし、話も上手い。暗黒ドラえもんみたいな話なんだけど、リアリティラインの保ち方が絶妙で、とても面白く読んだ。「おはなしがハッピーを生むんだっぴ」って着地もいい。