千葉雅也の『現代思想入門』を読んだ。
これがとてもよかった。一人一人の思想家の解説は橋爪大三郎の「はじめての構造主義」なんかと比べて随分あっさりしているのだけど、全体をひとつのストーリーがはしっていて、個々の思想家が繰り返し何度もでてくるので(多少チャート式ではあるけれど)ちゃんと印象づく。また、ひとつひとつの思想をその度に生活にそくした次元まで噛み砕いてくれる。
特に後半の、メイヤスーなどのポスト・ポスト構造主義をきちんと平易に解説してくれる新書は今までになかったと思う。さらに、このポスト・ポスト構造主義のところが補足的でなく、むしろ本書の結論部であることに興奮したし、感動した。
いってみると、ひとつひとつを実存的な問題として深く考えこみすぎるのではなくて、タスクはタスクとして単にこなしなさい、という大人な身の振りようなのだけど、それを哲学的に肯定してくれる。そのようなあり方は、むしろまた別の哲学的あり方なのだと。
また、ほかにも、区切って”大事な仕事”をするのでなくて、ヌルっと作業をはじめて、完璧じゃなくてもいい、むしろ完璧なんてありえないのだからその都度のレベルで構成すれば良い、というとても現実的に役立つ方法も学べた。
総じて大人なあり方を学べて、そのことに意味づけをしてくれるという意味で、とても良い本だったと思う。